TAROT PIERRE MADENIE 1709
(ピエール・マドニエ版タロット)




 今を去ることほぼ300年前、フランス・ブルゴーニュ地方の中心都市ディジョンで生まれたピエール・マドニエ版は、数多ある「マルセイユ系」タロットの中でも確実にその歴史的重要性において筆頭に挙げられるべきデッキの一つである。

 現在のプレイングカード史研究家の間では、いわゆるマルセイユ系タロットは大きく2つのグループに分類されている。それぞれ「タイプ I」「タイプ II」と称される両者にはデザイン上多くの相違点があり、例えば「恋人」の札に描かれるキューピッドに関して「タイプ I 」では頭髪がなく目隠しをしているが、「タイプ II 」では巻毛の髪があり目隠しは無い。また、前者の「月」の顔は真正面から描かれているが、後者では横顔になっている、等々。そもそも絵のタッチからして歴然とした違いのある両者はいわば二本の大きな川のようなもので、歴史の流れと共に時に交わり時に離れ、支流の如く多くの亜種や混合種をさまざまな土地・時代において誕生させてきた。
 さて、それら2本の大河の、恐らくは同一であったろう「水源地」は杳として知れない。では現在遡れる限りの上流はというと、興味深いことに両者共18世紀初頭のフランスに位置している。即ち、判明している限りでは両タイプの「典型例」として最も古い例が共通して1700年代初めのフランス東部で作られているのである。前者の代表がリヨンのジャン・ドダル版。そして後者がこのピエール・マドニエ版である。

 プロトタイプとも言えるデッキが17世紀までに幾つか見られることから、最初優勢だったのはタイプ I であったと考えられているが、後に時の淘汰を生き残ったのはタイプ II の方であった。現代のスタンダードといえるグリモー版(ポール・マルトー版)や権威あるニコラ・コンヴェル版もこちらに属する。そしてこのタイプとして最古の例たるピエール・マドニエ版は、後代の諸デッキと比べてデザイン的に至極洗練された優美さを持つ。さらには、神聖幾何学に基づいた分析によると構図的にも極めて優れているという(フランスの研究家ウィルフリード・ウドゥアンの言)。

 今回の復刻はマルセイユ出身の研究家イヴ・レノーが立ち上げた「古典タロット連続復刻プロジェクト」の第一弾であり、現存するピエール・マドニエ版としては世界で唯一の完品であるスイス国立博物館の所蔵品をもとにしている。現物のサイズや厚み、色合いや裏模様、さらには当時の包装紙まで忠実に再現し、古典デッキの復刻版として望みうる最高の品質を実現している。タロットの歴史に関心のある向きにはこの貴重極まりないデッキを入手されるよう心からお薦めしたい。

 (78枚、64×122mm)




\6,800(税別)
シリアルナンバー付き(限定1500部生産品)


 
製作者サイト(英語)


文責:夢然堂